成年後見人とは、
認知症・精神障がい・知的障がい等によって物事を判断する能力が十分でない
本人の権利を守り、法律的に支援する人です。
簡単に言えば、本人の代わりに「ハンコを押す人」です。
どんな時に必要になるのでしょうか?
本人が意思表示ができない状態なのに、以下のような事をしなければならなくなったときに
家庭裁判所に成年後見人を選んでもらう必要があります。
①本人名義の不動産を売るとき
②本人名義の預貯金を解約するとき
③本人が遺産を相続したとき
④本人が保険金を受け取るとき
⑤介護保険の契約をするとき などなど
たとえ家族であっても、これらの手続きを本人に代わって行うことはできないからです。
①本人の財産管理が合法に行える
本人や家族では行えなかった契約や解約手続ができます。
②本人がした不利な契約を取り消せる
よくあるのが、訪問販売で高価な健康食品を買ってしまった
何社もの新聞社と新聞の契約をしてしまったなど。成年後見人なら、なかったことにできます。
③家庭裁判所が関与して監視してくれる
成年後見人は毎年、本人の全財産の収支を家庭裁判所に報告するので、親族や第三者が本人の財産を使い込んでいた場合に取り戻したり、成年後見人による横領を防ぐことができます。
以下のデメリットを知った上で、成年後見人をつけるかつけないかを考えていただきたいのです。
「定期預金の解約が終わったら、成年後見人も終わると思っていました。」
「ずーっと報酬を払い続けるなんて知りませんでした。」
「こんなことになるなら、つけなかったのに…」という声を耳にするのも切ないのです。
①成年後見人は原則一生ついたまま
本人の意思能力が回復しない限りは、本人が亡くなるまで成年後見人はついたままです。
②報酬の負担が大きい
一生涯、報酬を払い続ける必要があります。
成年後見人の報酬は家庭裁判所が決めますが、本人の保有財産が多ければ報酬も多くなり、
1か月2万円~5万円ほど、1年で24万円~60万円が大阪の相場です。
③成年後見人は誰がなるかわからない
「親族を選んで欲しい」と家庭裁判所に申し立てても、約7割は職業後見人(司法書士・弁護士等)が選ばれています。つまり、家族以外の他人が家庭に入ってくるということです。
④財産処分が自由にできなくなる
成年後見人は、本人の財産を守るのが仕事なので、たとえ家族のためであっても、本人の財産からの支出はできなくなります。
例えば、孫の大学の入学金を出すということは、本人が元気な時に出すと言っていたとしても、出来なくなります。
また、相続税対策としての贈与、納税資金対策の生命保険契約もできなくなります。
⑤株式会社の役員になれない
既に取締役や監査役になっている場合は直ちに退任しなければなりません。
ただし、持っている株式まで失うものではないので、取締役としての地位は失ったとしても、株主としての議決権は失いません。
しかし、本人は議決権を行使することが出来ず、成年後見人が本人の法定代理人として議決権を行使することがあります。
後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。どちらも、判断能力が不十分な方々を法律面や生活面で保護・支援する制度ですが、大きな違いが2つあります。
それは、
①誰が後見人を選ぶのか?
②いつ選ばれるのか? です。
法定後見人(=成年後見人)は、認知症などによって本人が判断能力を失ってしまった後に、家庭裁判所に「成年後見人を選んでください」と申し立てた後、家庭裁判所が職権で選びます。
任意後見人は、本人の判断能力があるうちに、判断能力がなくなった後の事を任せるために、自分で信頼できる人を任意後見人として選んでおく人です。 つまり、
成年後見人=判断能力がなくなった後に家庭裁判所が、
任意後見人=判断能力があるうちに自分で 選ぶのです。
もし、成年後見人をつけたくないのなら
判断能力があるうちに任意後見人を選んでおく事をおススメします!
余談ですが、
法定後見制度には、ご本人の判断能力の段階により後見・保佐・補助の3つの種類があります。
1 後見
支援をする人を「成年後見人」と呼びます。
法律行為を代わりに行ったり、必要に応じて取消す保護者のような人です。
本人は、日常のお買い物程度のことは自分でも出来ますが、その他の事は出来なくなります。
印鑑登録も抹消されますが、選挙権はあります。
2 保佐
支援をする人を「保佐人」と呼びます。
後見よりは、本人ができる事が多いです。
本人が選択した特定の法律行為(例えば金銭の管理など)について、本人に代わって行います。
3 補助
支援をする人を「補助人」と呼びます。
殆どの事を本人も行うことが出来ます。
本人が選択した特定の法律行為については、本人の代わりに行います。